合同数問題とBSD予想
合同数問題という古典的な由来の問題を紹介します。
正の整数が合同数であるとは、辺の長さが正の有理数である直角三角形が存在してその面積がとなることである。すなわち、かつとなるが存在するときを合同数であるという。正の整数が合同数である条件は?
例えばは合同数ではなく、は合同数であることが知られています。実際、
であり、となっています。
また、157が合同数であることはZagierによって示されています。tsujimotter.hatenablog.com
によると
かつ
となっているらしいです。
ちなみに合同数を考えるとき平方因子をもたない(でない平方数で割り切れない)ときを考えれば十分です。
なぜなら平方因子を持たない正の整数と正の整数に対し、が合同数であるとき、有理数を用いてかつと書けますが、とすればも合同数であることがわかるからです。
正の整数が合同数である条件について今回は扱って行くことにします。
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ここで実はこの問題、楕円曲線が深く関与していることがわかります。その準備のためにいくつか事実を述べておきます。
具体的な演算については知らなくてもこの記事を読むことができますが、どうしても気になる方は楕円曲線の有理点 | 数理女子に具体的な記述があるのでがあるので参考に挙げておきます。(この演算は簡単な手法ですがここで紹介しなかったのは図を作るのが面倒だったからです)
は有限生成アーベル群である。すなわち
のねじれ元(正の整数回演算してになる元)全体をと書き、これは有限群になるので上の定理から
がわかります。このをの階数(rank)といい、と書きます。
であり、さらにのときは
ここで本記事の主役を述べます。がどう与えられるかという予想です。
ここでは関数ですが知らなくてもこの記事は読めるようになっています。また右辺はでの零点の位数(1という解の重複度のようなもの)を表しています。
この予想はミレニアム懸賞問題の1つとされ、解決した際の賞金として100万ドルが与えられます。
この予想に関して、次のことが示されています。
この逆()はまだ示されていません(BSD予想の一部)
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ここで合同数の話に立ち返ってみます。
とします。が合同数のとき、
このとき、とおくと
すなわち
言い換えると、
となっています。実はこの逆()も成立することが知られています。
対偶を取ると
この結果と上のよりを調べると合同数のことがわかる気がしてきました。
このことについてTunnellは数論幾何における強力な道具を用いた圧倒的証明によってを倒し、次を得ました。
を平方因数をもたない正の奇数とする。
よってBSD予想が合同数問題の鍵を握っていることがわかりました。
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参考
この記事を書くにあたり、以下を参考にしました。
tsujimotter.hatenablog.com
www.suri-joshi.jp
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